「図書館は格差解消に役立っているのか?」(片山ふみ・野口康人・岡部晋典) – SYNODOS -シノドス-

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経済資本(収入)、制度化された文化資本(学歴)、身体化された文化資本(美術館、コンサート)、社会関係資本(地域愛着、地域活動)いずれにおいても、資本が少ない人よりも多い人の方が図書館を利用しているという結果が観測できた。

ここまでの時点で「富めるものはますます富み、貧しきものはますます貧しくなる」というマタイの原則を打破するどころか、資本の蓄積が少ない層には利用されておらず、すでに資本を多く所持している層に積極的に活用されている様子が浮き彫りになったといえよう。このことから、公共図書館は格差是正機能を果たしていないことが推測される。

「公共図書館は格差是正機能を果たしていない」というタイトルはちょっと煽り風ではある。

記事中で筆者自身も述べているが、「ミクロな視点」でいえば、少なかろうが低所得層の中にも図書館利用者は存在し、図書館利用によって階層移動に成功した人間は存在するだろう。
根本的には数の多寡ではなく、階層移動の扉がどれだけ大きく開かれているかということが重要である。
この調査結果から我々は
「では、図書館をより低所得者層に開かれたものにするにはどうしたらよいか?」
または、
「図書館以上に高い階層移動効果を促せる使途がありうるか?」
という問いを課すべきだろう。