書評:『里山資本主義』(藻谷浩介、NHK広島取材班)

ううーん、事例紹介としてはまあ面白くないこともなかった(特にオーストリアのギュッシングモデル)が、全体として著者らの主張する「里山資本主義」の良い面ばかりを取り上げすぎで、読者の冷静な評価を妨げる部分が大きいように感じた。
また取り上げられる事例も「里山資本主義」に適合するようなものをキメラ的に継ぎ接ぎされたように見えてしまう。

ギュッシングモデルにしても、今後いつ技術的発展や気候変動その他の要因によって、ペレットが割高になるようなエネルギー価格の変動が起きないとも限らないが、いま高度に構築されている、森林の維持管理まで含めたペレットのシステムは人々を繋ぎ止めることができるのだろうか?

そもそも、本書の中でマネー資本主義/アメリカ型資本主義/マッチョな経済と対比される里山資本主義とはなんなのか、本書を読んでもよくわからない。

  • 過疎地や休耕地、放棄された森林といった市場価値が低くみなされている資源を活用し、エネルギーと食の自給率・地産率を上げていくこと
  • 上の取り組みを核として、市場経済は維持しつつもその影響を受けないサブシステムを構築していくこと

がその核のようだ。流動性が増す中でリスクヘッジとして市場の外にライフラインを確保するという考え方は確かに重要であり評価できる。
ただ、これはあくまでバックアップに過ぎないし、そもそも効率追求と流動性が加速していく現代資本主義の延長線上に、当初から存在したものではないだろうか。

『里山資本主義』(藻谷浩介 NHK広島取材班、2013.07)

はじめに 「里山資本主義」のススメ
第1章 世界経済の最先端、中国山地―原価ゼロ円からの経済再生、地域復活
第2章 二一世紀先進国はオーストリア―ユーロ危機と無縁だった国の秘密
中国総括 「里山資本主義」の極意―マネーに依存しないサブシステム
第3章 グローバル経済からの奴隷解放―費用と人手をかけた田舎の商売の成功
第4章 “無縁社会”の克服―福祉先進国も学ぶ“過疎の町”の知恵
第5章 「マッチョな二〇世紀」から「しなやかな二一世紀」へ―課題先進国を救う里山モデル
最終総括 「里山資本主義」で不安・不満・不信に訣別を―日本の本当の危機・少子化への解決策
おわりに 里山資本主義の爽やかな風が吹き抜ける、二〇六〇年の日本