書評:『戦略読書』(三谷宏治)

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書評:『戦略読書』(三谷宏治)

戦略読書
三谷 宏治

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ダイヤモンド社 2015-12-18
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ここ半年か一年ほど、読書ブームが穏やかにだが興っているようだ。書店には下記のような読書術の本が並ぶようになってきた。

アメトーークでの読書芸人が好評だったのも記憶に新しいところ。

又吉直樹が芥川賞を取ったことで文芸については注目が集まったが、どちらかというとビジネス系出版社からの読書本の出版が目立つ。仕事術・ビジネススキルアップの方法論として読書が取り上げられているのだ。
ダイヤモンド社から刊行されている本書もその流れの中にあるが、本書が面白いのはそうでありながら全編に本への愛があふれているところだ。読書と道具視する目線を隠し切れないほかの読書術本に比べ、俺はSF者だ!という叫びをほとばしらせる姿勢は読んでいて心地いい。

本書のコアは非常に明解で、

  • 人は読むものからできている
  • 読書は「自由に生きる」ために行うもの。自由に生きるために必要な次の3つの力を鍛えるためのものである
    • 想像力
    • 批判的思考力
    • メタ認知能力
  • ただ鍛えるだけではなく、コモディティとならないために戦略的な鍛錬が必要

そのために、

  • 大前提として、量を読むこと(日本人の平均読書量は月2冊。少なすぎ)
  • その上で、読む本について、自身の段階に合わせて何をどれだけ読むか戦略的に配分すること(読書ポートフォリオ)
  • その配分を適宜見なおしておくこと
  • さらに、配分した各ジャンルの図書について適した読み方を行うこと

というもの。読書術の本はある本をいかに読むかにフォーカスして、何を読むべきかについては「古典を読もう」といった一言指南的に終わるものが多いが、本書はむしろ後者に重きを置いている。そのため、他の読書術と組み合わせてもよいだろう。

「いつ・何を読むべきか」については、ビジネスマンをメインターゲットとして、社会人1年目前後は基礎的な体力となる本を(特に入社数年はビジネス書に注力)、それから5〜10年目に向けて、徐々に応用系や新規ジャンルの図書を開拓せよというのが主旨になる。

分厚い本だが平易な文章で読みやすい(ビジネス書ゆえにフォントも大きい)。
文中と巻末に豊富なブックガイドがあり、何を読むべきか迷っている向きにもよい指針となるだろう。