「押し付け憲法」と叫ぶことで、彼らは何を隠そうとしているのか?

主に憲法9条をめぐる憲法改正についての議論で、

  1. いまの日本国憲法はGHQ、連合国、あるいはアメリカによる押し付け憲法である
  2. だから憲法改正しなければならない

という右派の主張を目にすることが以前にも増して多くなっているのだが、いつまで言い続けるんだろうかこれ。この主張はっきり言って論理的に成立してないんだけど。

仮に右派の言うとおり現在の日本国憲法が戦勝国側の主導により作成され、当時の日本人の意志にかかわらず制定されたものだとして、で、だから何? なんでそれで憲法改正しなければならないことになるのかがわからない。

好意的に解釈すると、右派の憲法改正派は、上の1と2の間に「この憲法は日本人の不利益あるいは自由で主体的な意志決定を妨げるものとなっている」という状態を措定している。ということでこれを挿入すると、

  1. いまの日本国憲法はGHQ、連合国、あるいはアメリカによる押し付け憲法である
  2. これにより現在日本人は不利益を蒙り、あるいは自由で主体的な意思決定を妨げられている
  3. だから憲法改正しなければならない

となる。右派が事実として見ている2が挿入されることで、一応は意味が通る理屈になるように見える。
が、前段要らねえだろこれ。

  1. 現在日本人は現行の憲法により不利益を蒙り、あるいは自由で主体的な意思決定を妨げられている
  2. だから憲法改正しなければならない

これで十分だろう。
これはシンプルだ。「いまのやつあんま良くねえし変えようぜ」というごく理解しやすい主張だ。これでいいじゃないか。「押し付けだったのだ」と主張する右派も、得意気に「押し付けではなかった」と右派を論駁しようとしている左派もズレている。現行憲法の由来が本当はどうだったのかなどはっきり言ってどうでもいい。それは歴史の話でしかない。俺たちの動機にはなりえないものだ。

なぜ右派はシンプルでわかりやすいこの「より良いやつに変えようぜ」を主張しようとしないのだろうか。いや分かっている。お前らの言う「より良いやつ」ってこれかよ?と失笑されるのが彼ら自身にも分かっているからだ。
右派層の支持する安倍自民党の作成した憲法草案がこれ(PDFファイル)だ。時代錯誤なロマン盛り合わせの憲法草案()となっていて、まともにこの内容で勝負するとまず爆死するのが目に見えている。

参考 自民党憲法草案の条文解説 – 全文対照表、改正の概要、法的分析

こんなまともな現代人には相手にされない懐古主義の薄ら寒い産物を押し通すために、「これは悪い奴らから押し付けられたものだ、だからとにかく変えなければならないんだ」と叫び立てているのが現状だ(しかも彼ら自身はそのことに気付いていない)。

こんな連中にこれ以上付き合うのは時間の無駄である。重要なのはいかなるconstitution=国制が私たちのよりよい生と未来に最も資するものであるか、であって、歴史に対する個人的な感傷ではない。